とはいえ、ここで書いておけば、私は事件以来、マスコミの報道に違和感をもっています。彼らはまず、事件には日本と中国だけではなく、米国というもうひとつのプレイヤーがいたことにあまりにも無知すぎる。この点で記者の勉強不足は犯罪的なほどです。
まだあります。メディアが一貫して指摘し続けた「中国の日本への報復処置」なるものの中身を具体的に検証してみれば、特に目新しいものはなく、文化交流の中止など、仮に中国がそれに踏み切ったとしても、実際の影響はほとんどないに等しいものでした。そもそも、SMAPが上海万博に出演しないからといって、それは一時的には話題にはなるものの、どれほど実際のダメージがあるというのでしょうか。私がブログで中国の『報復』なるものの実態が「雷の音は聞こえてくるが、雨は降ってこない』と書いたのはこのためでした。
経済界が警戒していたレアアースについても、中国政府が事件以前のこの夏から日本だけではなく海外に対して輸出を中止するとしていたもので、今回特に新しく報復処置として、持ち出されたものというわけではありません。
つまり中国の繰り出したカードの狙いは政治的アピールにあり、中国側に及ぼす実際のダメージは限定的なものばかりが選ばれているのです。ですが、それを朝から晩までテレビメディアはなにか大変なことが起こっているかのように『現場からお伝えします』と煽り続けていたのです。敗北したのは政府だけではありません、中国の流す一方的な情報をただただ垂れ流すだけだったジャーナリズムも一敗地にまみれたのです。
日本政府は中国が繰り出す実害の少ない『対抗処置』におびえ、超法規的処置をとることで、尖閣列島に及ぶ日本が領有権を持つ尖閣列島をあたかも「紛争地域」であるかのように内外にイメージさせてしまいました。
それにしてもこの事件において、あれほど日中の経済協力の拡大に意欲的だった丹羽大使の顔と存在が希薄です。なにをしているのでしょうか。彼の大使就任をヨイショした文化人たちのコメントもほしいところです。
”- 中国船長釈放について - 青木直人BLOG: 2010年9月25日 02:38 (via nandato)